インピーダンス ちょっとだけ

 インピーダンスってなにか、調べると「交流的な抵抗」と出てきます。今回は取り合えずコンデンサやコイルが出てこない時のインピーダンスに付いて少しだけ考えてみましょう。

電池の出力インピーダンス

 誰もが使っている乾電池。古い乾電池と新しいものとの違いをテスターを使って測ってみました。テスターは二台用意します。一台は電圧計として、もう一台は電流計として使います。図2の様に接続します。抵抗は値の違うものを三本用意して取り替えながら電圧と電流を測定しました。

電池の出力インピーダンス 用意するもの
電池の出力インピーダンス 測ってみよう
電池のインピーダンス 新しい電池

 グラフ1は新しい乾電池を測ったものです。横軸0の所は電流が流れていない事を示していて、抵抗を付けていない状態です。三本の抵抗を付け替えながら電圧を測ると流れる電流が増えるに従い電圧も下がっていきます。この様子から、電池の内部は1.607Vの理想電圧源と内部抵抗が組み合わされていると考える事が出来ます。次の図3を見てください。

このときこの内部抵抗は⊿V/⊿Ⅰで次の通り計算されます。

抵抗値=(1.607Vー1.598V)/(28.73mAー0mA)=0.31Ω

電池のインピーダンス 内部抵抗

 電池の電圧は接続される抵抗に関係なく1.607Vで、外部に接続された抵抗に流れる電流の増加に伴い内部抵抗による電圧降下が起きていると考えることが出来ます。この内部抵抗を出力インピーダンス、またはインピーダンスと呼びます。

電池のインピーダンス 古い電池

 古い電池も同じように測ってみました。結果はグラフ2の通りです。こちらの出力インピーダンスは1.54Ωとなります。
古い電池では電圧も落ちるのですが、出力インピーダンスも大きくなることがこの実験からも分かります。

抵抗と消費電力を考えるための回路例

 ところでこんなことを考えてみます。図4を見てください。電圧と出力インピーダンスRoの値は計算しやすい様に簡単な値にしました。電流が流れない時の電圧が1Vで出力インピーダンス1KΩの乾電池の外側に抵抗RLを付けてみます。RLに流れる電流は1V/(1KΩ+RL)になります。RLの値を変えながら、RLで消費される電力を計算してみます。電力=電圧x電流=(RL X 電流)X 電流=RLx 電流^2ですね。

 エクセルを使って計算したのが表1とグラフ3です。見ていただくと外に付けた抵抗RLが出力インピーダンスRoの値1KΩと同じになった時にRLで使われる消費電力が一番大きくなっています。この時にインピーダンス整合(マッチング)が取れたと言います。ここでは単純なDCだけで見ていますが、AC(コンデンサやコイルが入った回路)で考えるほうが一般的です。

負荷の消費電力 エクセル
負荷の消費電力 グラフ

複数の抵抗とインピーダンス

複数の抵抗とインピーダンス

 図5を見てください。比較的簡単な回路を書いてみました。学校で習ったオームの法則を使うと、電源から抵抗に
5V /(2KΩ+3KΩ)=1mA
の電流が流れ、
A点の電圧は
5Vx (3KΩ /(2KΩ+3KΩ))=3V
になる事が分かると思います。

 それでは図6aの様にA点から電流を1mA引っ張り出したらA点の電圧はいくつになるでしょう?やってみると、この計算ちょっと難しそうですね。そこで私が計算してみました。図6bの様に1.8Vになります。この値がほんとに合っているか確認してみましょう。確認の計算の方は簡単です。R1の両端の電圧は5Vー1.8V=3.2V、R2の両端の電圧は1.8Vになります。それぞれの抵抗に流れる電流は、電圧/抵抗ですから1.6mAと0.6mAになります。算出した電流の関係はI1=Io+I2になります。従ってA点から出ていく電流は1mAとなります。初めにA点からの電流が1mAとしましたが、これと一致しており私の計算が合っているという事になります。
同じ様に2mA引っ張り出した時の電圧は0.6Vになります。私の計算が合っているか同じ方法で確かめてみてください。

インピーダンス 確認してみよう

 なにか気が付いた方はいらっしゃいますでしょうか。
図6bと図6cの関係から、⊿V/⊿Ⅰを使ったら乾電池の時と同じように出力インピーダンスを求められそうですね。やってみましょう。

⊿V/⊿Ⅰ=(1.8Vー0.6V)/(2mAー1mA)=1.2KΩ

 そして乾電池の時と同じように回路を書き換えることが出来ます。図7bです。
ところで、図6の時に1mA電流を引いた時の電圧を簡単に算出できませんでした。電圧は簡単にだせないものの出力インピーダンスなら簡単に出せるんです。単純にR1とR2を並列にした時の抵抗が出力インピーダンスになります。
1/(1/R1 + 1/R2)=1.2KΩ
私は先に出力インピーダンスを出しておいて1mAと2mAを引っ張った時の電圧を出しました。
A点の電圧=3Vー1.2KΩ X 1mA=1.8V ・・・1mA引っ張った時
A点の電圧=3Vー1.2KΩ X 2mA=0.6V ・・・2mA引っ張った時
なぜR1とR2を並列にすると出力インピーダンスになるのでしょう。私は次の様に考えます。算出するのは⊿(変化分)です。R1の上端は電源ですから電圧は変化していません。ですから5Vが5万Vでも電流(今回は1mA)に対するA点の電圧の変化量は同じと考えられます。5万Ⅴになると最初に電流を引かない時の電圧が3Vから3万Vになりますが、変化量であるインピーダンスは変わらないと考えます。つまり電源の電圧がいくらでもいいんですから、次の図7cの様に書き換えることが出来ます。
 この様な場合の出力インピーダンスは各抵抗の並列になる事を知ってくと便利になります。 (ちなみに5Vの電源のことを変化しない電源である事からACグランドと呼ぶことが多々あります)

複数の抵抗の場合のインピーダンス 考え方

如何でしたでしょうか。