ギターアンプの最大出力(W)ってなに?

ギターアンプはそれぞれに最大出力(W)が決まっています。この最大出力とは何でしょうか? また最大出力はどうやって決まっているのでしょうか?

最大出力とは、スピーカーに入る前の最大の信号の大きさを表したものです。出力、ミュージックパワー、定格出力などとも表され、歪率で正規化されたりと多少の違いはありますがここではざっくりと最大出力と呼びます。それではまずその大きさに付いて確認してみましょう。

最大出力の算出

図1-1にアンプのイメージを示しました。図1-2にはスピーカーの入力波形を書いてみました。ギターを弾くとスピーカーにはその音の波形が入力されます(緑)。ボリュームを上げていこの波形は大きくなります(青)。さらに大きくすると限界が訪れ波形が歪み始めます(赤)。この歪む直前の信号を電力Wで表し最大出力と呼びます。アンプ自体の消費電力とは別ですから注意してください。

回路ブロックイメージ 算出
回路ブロックイメージ 波形

それではこの波形で最大出力を計算してみましょう。
+側のピークとー側のピークの電圧差が80Vありますからこの時の大きさを80Vpp(80ボルト ピーク ツー ピークと読みます)と言います。最大出力は実効値で計算しますので80Vを2で割りさらにルート2で割ります。従って出力電圧の実効値は28.3Vrmsです(28.3ボルト アームス または28.3ボルト アールエムエスと読みます。表記に付いては実効値と宣言した上でそのままVを使う場合もあります)。実効値とは直流に換算した値で図1-2内に点線で示しました。
最大出力は=電圧 X電流
     =電圧 X ( 電圧 / 抵抗 )
     =28.3Vrms X ( 28.3Vrms /8Ω )
     ・・・8Ωはスピーカーのインピーダンスです
     =100W になります。
40Vppの時の最大出力も同じようにして計算してみましょう。
最大出力は=電圧 X電流
     =14.1Vrms X ( 14.1Vrms /8Ω )
     =25W になります
80Vppの半分の40Vppは50Wではなく25Wになる事に注意してください。
もうひとつ注意点です。
最大出力とはスピーカーに入力される電気信号の最大値で音の大きさではありません。つまり、電気信号を空気振動の音に変えるのがスピーカーですから、スピーカーの効率(感度)によっても音の大きさに違いがでる事に注意が必要です。
(本投稿では下付きのRMSを都合で小文字で表現しています)

最大出力は何で決まる?

回路ブロックイメージ 最大出力は何できまる?

真空管を使ったアンプの場合、何が最大出力を決めているのでしょうか。
出力管に注目してみましょう。図2-1の緑色の部分に出力管があります。この部分を取り出した回路の一例を図2-2に示しました。さらに図2-3に波形のイメージを書いてみました。二次側のスピーカーの入力で信号が途中から歪んでいます。トランスの一次側は、巻き数比で大きさが変わりますが同じ形の波形となります。つまり、一次側であるプレートの電圧が歪むとスピーカーに入る信号も歪むことになります。プレートの電圧を上げるとプレートの信号の振れ幅を大きくすることが出来ます。この例から一般的な真空管アンプの最大出力はプレート電圧の大きさに支配的である事が分かります。

回路イメージ 最大出力は何で決まる?
出力波形 最大出力は何で決まる?

終わりにトランスに付いて少しだけ説明しておきます。図2-4にトランスを示しました。一次側の電力と二次側の電力は保存則に従って常に等しくなります。一次側の電力を上げれば二次側(スピーカーを接続する側)の最大電力も上げることが出来ることになります。つまりプレートの電圧(と電流を引っ張るための出力真空管の能力)が最大出力を決めるために支配的となることがこちらからも分かります。

トランス 最大出力は何で決まる?